1つ目は、個人投資家が機関投資家に対して圧倒的に情報劣位にある点です。株価形成やその変動要因が判然としなければ、株式投資を投機的なものと見做して忌避する風潮も致し方なく思えます。
2つ目は、事業知見が十分でないプレイヤーの考えや意思決定が株価形成において支配的である点です。株式アナリストや機関投資家は企業分析や株式投資のプロですが、事業実態に対する理解は限定的で経営者や事業従事者には遠く及びません。ただし、現在の投資情報市場の在り方では生の情報が織り込まれる機会は限定的で、事業実態と異なる見方がコンセンサス化してしまうことがあります。
3つ目は、情報の流れが「経営者→IR担当者→株式アナリスト→機関投資家」といったように一方向的である点です。情報の伝達者によるバイアスがかかりやすく、またそれを正す機会は限定的です。
もちろん過去と比較すれば状況は改善しています。企業による情報開示は定量・定性共に改善し続けていますし、企業と投資家が双方向的にコミュニケーションをとる意識を持つことで情報はより深化しているでしょう。ただし、それが高水準で実現できている企業はわずかで国内3,000社強の上場企業は十分な情報でもって評価されていないと考えています。非情報効率的であるが故に将来見通しが立てやすい短期業績予想をもとに株価形成され、それが経営者評価に繋がるため経営判断が短期志向に偏る傾向(投資家及び経営者のショートターミズム)があります。
このような問題意識から生み出したのが、多様なプレイヤーと企業業績や株式投資の情報・意見を交わし理解を深めるためのリサーチプラットフォーム「Ishare」です。誰でも閲覧できるオープンな情報プラットフォーム上で、本格的な企業・業界等の調査レポートを議論の土台に、投稿欄を用いて多様なプレイヤーが双方向的にディスカッションすることで情報を深化し、中長期的視点を持った深度ある投資・経営判断を促進し株式市場の活性化に資するサービスを目指します。
私が株式アナリストとして活動していた時、「アナリストとして評価されるためには投資家のディスカッションパートナーに選ばれる必要がある」とよく言われました。納得した投資行動のためには、機関投資家であっても自分なりの考えに落とし込むためにディスカッションパートナーを求めます。逆に、株式アナリストとしても投資家や経営者とディスカッションすることで新たなインスピレーションが湧くことが多々ありました。ニーズを100%満たす調査レポートなどありません。時に意見を交わしつつ、読み手一人ひとりが自分なりの理解をすることが重要だと考えています。Ishareが「あなたの株式投資のディスカッションパートナーに」選ばれると幸いです。今後とも、末永いご理解とご支援のほどを何卒よろしくお願い申し上げます。