売上分析のやり方
2022.08.27
010_売上分析①

株式アナリスト・経営コンサルタントとして100社超の上場企業を分析した筆者の企業分析手法

 前回まで、①企業分析の第一歩は有価証券報告書の【事業の内容】や会社案内(事業紹介)で”事業を知る”こと、②Excelで業績モデルを作成しながら事業を定量的に把握する方法、の主に2点をお伝えしてきました。ただし、「会計データを羅列した数表だけではイマイチイメージが湧かない」、「業界や競合分析を踏まえた包括的な企業分析のやり方が分からない」、「小難しくて取っ掛かりにくい」といった声もあるかと思います。以降複数回にわたって、図表を用いたケーススタディで、視覚的に分かりやすく企業分析を進める方法やステップをご紹介します。なお、業績モデルの整理の仕方はコチラをご確認下さい。

1.企業業績は①構成比、②過去推移の2ステップで把握しよう

 企業業績を把握する際、その内容が売上高であろうが、売上原価や販管費といった費用であろうが、①直近通期など1時点における内訳の把握(構成比)、②その内訳の変遷(過去推移)、の2ステップで把握するようにしましょう。そうすることで、何を重点的に分析すべきかが見えてきます。

2.まずは直近通期の売上構成比を円グラフにしてみよう

 売上分析の第1ステップは、直近通期の売上構成比を円グラフにすることです。以下は、フィットネスジムやスイミングスクール施設等の運営を手掛けるセントラルスポーツ(4801)の売上構成比です。

【セントラルスポーツの売上構成比(22/3期)】

出所:セントラルスポーツIR資料より筆者作成

 フィットネス・スクール事業が全社売上高の大半を占めると分かります。仮に各事業の売上高が20%拡大した場合、フィットネス事業であれば全社売上高を約10%(=20%×46.9%)も押し上げる一方、業務受託事業であれば約3%弱(=20%×13.7%)しか押し上げないため、フィットネス事業の方がより深掘りすべき分析対象だと分かります。以下図のように、会計情報をExcel等に打ち込んで整理したものと比較すると、分かりやすさが際立つと思います。

出所:セントラルスポーツIR資料より筆者作成

3.セグメント別以外の分類でも売上構成比を確認してみよう

 売上高の内訳として代表的なものは決算短信の後半部分等で確認できるセグメント別ですが、国別や顧客別、チャネル別など見るべき区分は他にもあります。例えば、電子書籍取次の国内最大手であるメディアドゥ(3678)の顧客別売上構成比は以下のようになります。

【メディアドゥの顧客別売上構成比(22/2期)】

出所:メディアドゥIR資料より筆者作成

 LINEやAmazonといった大口顧客上位4社で売上高の過半を占めると分かります。全社売上高の一定割合が特定の顧客で占められる場合、顧客側の業績動向や経営判断により調査対象企業の業績が大きく変動し得るため必ず確認するようにしましょう。実際、メディアドゥのケースではLINEが取次機能の内製化を進めているため、今後LINE向け売上高は従前の1割程度まで急減すると見られております(22年8月時点)。なお、全社売上高の10%以上を占める特定顧客がいる場合は有価証券報告書の【生産、受注及び販売の実績】や【主要な顧客ごとの情報】での開示が義務付けられております。

 国やカテゴリを掛け合わせ、ドーナツグラフで売上構成比を把握することも一案です。以下はスポーツ用品を製造・販売する美津濃(ミズノ、8022)の売上構成比ですが、①売上高の1/3は海外である、②国内はアパレル売上高が支配的な一方で海外ではフットウェアやイクイップメントといったカテゴリの売上構成比が大きい、ことなど一歩進んだ理解ができます。

【ミズノの売上構成比(22/3期)】

出所:美津濃IR資料より筆者作成

4.過去推移は積み上げ棒グラフと折れ線グラフを使い分けて把握しよう

 円グラフで①構成比を把握したら、次は②過去推移を把握しましょう。まずは全社売上高の推移と合わせて把握するため、積み上げ棒グラフを作成してみることをオススメします。以下は、業界初のバームタイプのクレンジング「DUO」のヒットで業績拡大したプレミアアンチエイジング(4934)のブランド別売上高の推移です。

【プレミアアンチエイジングのブランド別売上高の推移】

出所:プレミアアンチエイジングIR資料より筆者作成

 過去業績を牽引したのは「DUO」ですが、第2のブランドの「CANADEL」が21/7期より収益拡大し全社の売上成長をドライブしており、現状の売上構成比は限定的なものの将来業績を見通す上で重要なブランドであると分かります。

 全社業績へのインパクトでなく区分別の売上高推移を比較する場合には、積み上げにせず折れ線グラフで確認するのも一案です。化粧品・健康料飲を主に中国で販売するアクシージア(4936)の商品別売上高の推移を折れ線グラフで示すと、20/7期以前はAGドリンクが主力だったものの、エッセンスシートの売上拡大に伴い足元は同商品が主力にとって代わっていると分かります。また、通期でなく四半期で推移を見ることでモメンタムや季節性等も合わせて確認することができます。

【アクシージアの商品別売上高の推移】

出所:アクシージアIR資料より筆者作成

 以上、売上分析のファーストステップをご紹介しましたが、これだけでは表面的な分析に留まってしまいます。次回は、売上高を単価×数量など要素分解して視覚的に分析する方法をお伝えします。

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