売上分析のやり方
2022.08.30
013_売上分析④

株式アナリスト・経営コンサルタントとして100社超の上場企業を分析した筆者の企業分析手法

 前回(リンク)は、業界分析の手法や着眼点をご紹介しました。今回は、その業界分析と個社動向を掛け合わせた分析方法について、図表を用いたケーススタディで、視覚的に分かりやすくご紹介します。なお、業績モデルの整理の仕方はコチラを、モデルフォーマットはコチラの中ほどを確認下さい。

1.業界動向と個社の売上高を掛け合わせてみてみよう

 企業×業界分析の最もオーソドックスな分析は、業界動向と個社の売上高を掛け合わせて見てみることです。個社の売上高が増加(又は減少)している際、その要因が業界などマクロ的な要素に起因するのか、個社の施策や経営戦略に依るのかを分けて考えるのに役立ちます。例として、中高齢の女性向けフィットネスクラブをFC展開するカーブスホールディングス(7085)の売上高と業界動向を見てみましょう。以下図の積み上げ棒グラフが個社売上高、折れ線グラフが業界動向です。

【カーブスホールディングスの末端売上高と業界動向】

注:市場規模は出所のフィットネス会費収入を参照した。また、末端売上高とはカーブスHDの売上高でなくFC店側の売上高を指す。
出所:経済産業省「特定サービス産業実態調査」、カーブスHDIR資料より筆者作成

 フィットネス業界はCOVID-19影響で業績が大きく悪化した業界ですので、その落ち込みと回復状況を見るために市場規模はCY19 4Qを100とした指数に変換した上で、個社売上高と始点(図表上の高さ)が一致するようにグラフレイアウトを調整しております。このように見ると、①個社・業界共に2020年前半に大きな落ち込みを経験したものの足元一定の回復を果たしている、②市場はCOVID-19前比70%水準に留まっているのに対し個社は90%水準まで回復しており何らかの個社要因によりシェアアップが実現できている、といったことが読み取れます。

 上記では実数を掛け合わせる見方を紹介しましたが、増減率を比較するパターンもあります。例えば、スポーツ用品を製造・販売する美津濃(ミズノ、8022)の国内売上高と運動用具類の国内消費の増減率を比べてみるとかなり高い一致性が確認でき、ミズノの国内売上高を予想する上では、業界見通しが重要だと分かります。

【ミズノの国内売上高とスポーツ用品消費の増減率の推移】

注:総務省統計は二人以上世帯の運動用具類に係る月次支出を期間集計したものである。
出所:総務省「家計調査」、ミズノIR資料より筆者作成

2.業界動向は個社のマージン推移と一致することもある

 少し応用編ではありますが、業界動向と個社の(売上高でなく)収益性を掛け合わせて見るべき場合もあります。例えば、中古マンションの仕入販売を手掛けるスター・マイカ・ホールディングス(2975)は、中古マンション市場の単価推移と、主力のリノベマンション販売の粗利率に相応の相関関係が見られます。

【スター・マイカHDのリノベマンション販売粗利率と市中中古マンション単価の増減率の推移】

注:市場㎡単価は首都圏成約単価を参照している。また数値は2年前比である。
出所:東日本不動産流通機構、スター・マイカHDIR資料より筆者作成

 これは、同社のビジネスモデル上、中古マンションを仕入れてから販売するまで約2年のラグがあり、その間の市場価格の上下がマージン変動要因の一要素として顕在化しやすい特性を持つためです。このように、調査対象企業ごとに掛け合わせるべきポイントは異なるので、企業のビジネスモデルをしっかりと把握した上で、仮説をもって業界分析することをオススメします。(事業を知るためのポイントはコチラ

 以上、業界動向と個社業績を掛け合わせた分析手法の一例をご紹介しましたが、企業業績を理解するためには、市場全体でなく同業他社との競争環境を確認することも重要です。次回は同観点に基づいて、競合分析の仕方をご紹介します。

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