株式投資の市場動向
2022.01.14
004_個人投資家の株式投資スタンス

Introduction

 “個人投資家の38.3%は株式投資金額が100万円未満”、この事実を見ると、株式投資が身近に感じられませんか?近年、若年個人投資家が急増しておりますが、彼らはどの程度の金額を、どういったスタンスで運用しているのでしょうか。株式投資の等身大を知ることで、自身にあった株式投資を模索頂けると幸いです。

1.個人投資家は、どの程度の金額を株式投資に振り向けているのか?

 以下の、金額別に分類した個人投資家の株式保有額の構成比を見てください。

図表:個人投資家の株式保有額の構成比(21年7月)

出所:日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査について」資料よりIshare作成

参考URL:2021kozinntousika2.pdf (jsda.or.jp)

 株式投資金額100万円未満が38.3%、50万円未満でも23.8%を占め、低額投資が普及していると分かります。時系列でも見てみましょう。

図表:個人投資家の株式保有額の構成比(12→21年)

出所:日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査について」資料よりIshare作成

参考URL:2021kozinntousika2.pdf (jsda.or.jp)

 過去と比較すると、”100~300万円”の層が大きく減少する一方、”100万円未満”と”300万円以上”の構成比が上昇し、二極化が起きております。”100万円未満”の層に関しては、14年1月に開始したNISAの非課税枠が120万円/年に設定されている等、各種税制優遇制度の非課税枠が少額に設定されており、”まずは税優遇範囲で株式投資を始めてみよう”といった層が増えたことが一因と見られます。”300万円以上”の層も拡大しておりますが、NISA等で株式投資に慣れ始めた層が、自身の金融資産(預貯金他)に占める株式保有割合を大きく拡大する傾向があるのかもしれません。また、昨今の株高により持株の価値が大きく上昇した結果の可能性もあるでしょう。

2.個人投資家は、何をきっかけに株式投資を始めるのか?

 若年個人投資家は、NISA等の税優遇制度をきっかけに株式投資を始めることが圧倒的に多いようです。

図表:有価証券投資に興味・関心を持ったきっかけ

注釈:回答率が40%を超える項目、及び18年7月調査と21年7月調査の回答率の差分が5.0pptを超える項目をハイライトしております。

出所:日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査について」資料よりIshare作成

参考URL:個人投資家の証券投資に関する意識調査について | 日本証券業協会 (jsda.or.jp)

 有価証券投資に興味・関心を持ったきっかけとしては、“①投資に関する税制優遇制度があることを知った”、”②今の収入を増やしたいと思った”、といった項目が上位に位置しますが、特に20~30代の若年個人投資家にその傾向が強いと分かります。また、若年個人投資家に限ってみると、”⑤少額からでも投資を始められることを知った”といった項目の回答率が高い点も特徴です。政策的な後押しやスマホ証券台頭に伴う株式投資ハードルの低下から、従来比でよりライトな個人投資家層が株式市場に新規参入し始めているようです。

 また、時系列でみて特徴的なのは、”⑥分散投資などリスクを抑えて投資をする方法があることを知った”との項目の回答率が大きく上昇傾向にある点です。株式投資に対するリテラシーの向上を伴って、株式投資が普及し始めていると解釈できます。確かに、”税制優遇制度”の範囲に収まる”少額投資”で、リスクを抑えた”分散投資”を行った結果として”今の収入増”が期待できるのであれば、十分に株式投資を始めるきっかけとなり得ますね。”分散投資”は株式投資をする上で大変重要なキーワードですので、株式投資を検討される方は是非理解を深めてください。(理論的な正誤は兎も角、分散投資の考え方や効果に関する説明はインターネット上に多くありますので、本ブログでは説明を割愛致します。)

3.個人投資家はどういったスタンスで株式投資に臨んでいるのか?

 株式投資というと、短期間での売買により投機的に収益を上げるイメージがある方が多いかもしれませんが、そのようなスタンスで株式投資を行っている個人投資家は、”圧倒的な少数派”です。以下の、個人投資家の株式投資方針に関するアンケート調査をご覧ください。

図表:個人投資家の株式投資方針

注釈:18年7月調査と21年7月調査の回答率の差分が5.0pptを超える項目をハイライトしております。

出所:日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査について」資料よりIshare作成

参考URL:個人投資家の証券投資に関する意識調査について | 日本証券業協会 (jsda.or.jp)

 “④値上がり益重視であり、短期間に売却する”との回答よりも、”②配当・分配金・利子を重視している”、”③株主優待を重視している”といった項目の回答率が高く、安定収益源を重視し長期投資している個人投資家が支配的であると分かります。また、時系列で見ても、”④値上がり益重視であり、短期間に売却する”との回答率は、全年代で低下傾向にあり、このような投資スタンスは”圧倒的な少数派”です。概して株式投資は短期的に大きく収益を上げたプレイヤーがステレオタイプになりやすいですが、その大きなリターンの裏返しとして、大きなリスクを負っていたであろうことは、意識頂ければと思います。

Implication

 以上より、

  • 個人投資家の4割弱は株式投資金額が100万円未満
    ⇒ 少額から株式投資を始める個人投資家が多い
  • NISA等の税制優遇制度を用いて、配当等の安定収益源を重視し分散投資するケースが多い
    ⇒ 短期間の売買により投機的に収益を上げるプレイヤーは”圧倒的な少数派”

ことがお分かり頂けたかと思います。

 次回以降は、”企業分析のやり方”シリーズとして、複数回に分け企業分析のメソッド・ポイントを紹介します。

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